パタヤに来るたびに中心地に聳えるコンドミニアム「THE BASE」のどこかの部屋を借りている。キッチン、リビング、寝室があり多くは洗濯機も備えているため何かと便利だ。このコンドには多くのオーナーがいて、彼ら彼女らが部屋を所有。それを観光客に貸し出す、というスタイルだ。このため、B棟の1階にある受付の女性に部屋について質問しても「部屋の所有主については分かりません」という言葉が返ってくる。
鍵の受け渡しをめぐっては多くのトラブルが発生している。ほとんどは「オーナーから連絡が来ない」というもの。よく観察していると、A棟、B棟の1階ソファやその周りには、困ったような表情を浮かべてスマホをいじっている旅行客がいる。おそらく鍵をめぐるトラブルにあっているのだろう。
私も鍵の受け渡しに関しては困った事態を経験している。チェックインが午後2時なのに、その時間を過ぎてもオーナーから連絡が来ない、など。その際は午後4時ごろにようやく連絡が来て何とかしのいだが、あまり気分は良くない。そして、今回、ついに詐欺被害にあってしまった。前日に旅行サイトのagodaで2泊を予約。翌日昼頃にオーナーから「チェックインは午後2時。ルームナンバーと鍵について連絡します」とagodaの「宿泊施設からのメッセージ」欄にメールが来ていた。
ところが、午後2時を過ぎても次の連絡が来ない。午後3時、4時になってもダメだ。仕方なく現地に行くことに決めた。1階のソファや石のベンチでスマホをいじっている中年女性がいたら多くの確率でこのコンドの部屋のオーナーだ。1人で40部屋を所有しているオーナーもいる。オーナー同士いつも情報交換をしているようでコンドミニアム全体の動向を把握しているのだ。女性同士3、4人で談笑していたある女性に「このbXXXXという人の部屋を予約したのですが、連絡がありません」と聞いてみると、「ああ」という表情を浮かべ、「この人はいま部屋を持っていないはず。半年前に全部売却したようだ」と明かしてくれた。え! ということは詐欺なのか? その女性は「あなたと同じような被害にあった人がたくさんいる。agodaに連絡してキャンセルした方がよい」とのアドバイスをいただいた。
そんなことがあるのか、とビックリしたのと同時に怒りが込み上げてきたが、他に方法はない。agodaの「ヘルプセンター」に連絡しチャットで非常事態を知らせると、「部屋の代理店に連絡をとります。30分ほどお待ちください」→「代理店から連絡がありませんので無料キャンセルをお受けします」→「ご本人様のメールアドレスに30分以内に確認のメールをします」という流れ。しかし、今度はagodaからのメールが届かない。再度、「ヘルプセンター」に連絡して「その後、どうなっているのか」と問い合わせしたところ、同じようなやりとりが続いた後、チャットだけで無料キャンセルの手続きが終了した。どうやら生成AIが答えているようで、一貫性がないのが少し面白かった。agodaからはお詫びとして約750円分のagodaコインの提供があった。
それにしてもひどいものだ。まったく連絡してこなければよいのに宿泊当日の昼間に「ルームナンバーを知らせます」というメッセージを送るなんて完全に確信犯だ。agodaの口コミを見ると、同じような被害にあった人の怨嗟の声があふれていた。本当に注意が必要だ。
実はこういうケースはTHE BASEだけではなかった。南パタヤに完成した西洋のお城のようなコンドミニアム「city garden olympus condominium」でも被害者が出ていた。
私がチェックインしようとレセプションに行くと、「部屋のオーナーと直接連絡をとってください」とのこと。オーナーにメールで連絡すると、すぐに返事が来てものの10分足らずで入室することができた。
到着した際、警備員のおじさんが話しかけてきた。「彼女、部屋を予約して支払いも済ませたのにオーナーと連絡がとれず困っている」。私が予約した部屋のオーナーに直接電話を入れて「女性が困っています。少し助けてください」とお願いすると快諾してくれてすぐに受付まで来てくれた。その女性はタイ人で思わぬトラブルにかなり憔悴している様子。スマホで問題になっている部屋のオーナーの情報を見せると、「ああ、その人は中国人で所有していた部屋をすべて売却して本国に帰ったようだよ。だから今、部屋はないはず。agodaに連絡してキャンセルと返金を申し出たほうがいい」。タイ女性は呆れた様子で、agodaに連絡を入れていた。彼女もまた宿泊詐欺にあってしまったのだ。
コンドミニアムをめぐるこのようなトラブルは日常茶飯事らしい。一方で、THE BASEのはす向かいで威容を誇る名門コンドミニアム「ビュータレー」の場合はそのようなトラブルはほとんどない。3階に部屋を所有している代理店の事務所が複数入居しているため、そちらに出向けば鍵の受け取りは可能だ。パスポートを見せて書類にサイン。デポジット1000バーツ(約4300円)を求められることが多いので事前に現金は用意しておこう。
コンドミニアムを舞台にした悪質詐欺にはくれぐれも気をつけてください。