パタヤのライブハウスはなぜKISSばかり演奏するのか?欧米系お父さん向け?

【タイ編】

パタヤには無数のライブハウスがある。ウォーキングストリート、LKメトロ周辺が特に多い。

ビールは1本100バーツ(440円)前後。気になるのはバンドが演奏している曲。どこも同じ楽曲を繰り返し演奏しているように聞こえるのだ。ソイブッカオのLKメトロ前にあるライブハウス。大音響のサウンドが流れている。もはや爆音、騒音に近いが、実は聞きなれた楽曲だった。それはアメリカのハードロックバンドKISSの「ラブガン」だ。これ、1977年、48年前に発表されたアルバムの収録曲だ。

演奏していたのはKISSのコピーバンド。化粧も衣装もそっくりだ。

KISSはボーカルのポール・スタンレー、火を吹き血を吐くパフォーマンスで人気を誇ったベースのジーン・シモンズ、「ベス」や「ハード・ラック・ウーマン」を歌ったドラムのピーター・クリス、ギターのエース・フレーリーの4人組。「デトロイト・ロック・シティ」「ラヴ・ガン」「ブラックダイアモンド」など数々の代表曲を披露していた。

店内は40年以上も前にKISSを聞いていたであろう60代や70代の欧米系お父さんがちらほら座っているが、瓶ビールをチビチビと飲んでいてそれほどノリノリという感じでもない。

他には30代から40代くらいの、はやり欧米系の男性客ばかり。女性もいるにはいるが、音楽を聴いているという様子ではなく彼氏との会話を楽しんでいる。

パタヤのライブハウスではKISSが定番中の定番。他に1983年リリースのヴァンヘイレンのアルバム「1984」に収録された「ジャンプ」(Jump)」、イギリス伝説のロックグループ、レッドツェッペリンの代表曲「天国への階段」やディープ・パープルの「バーン」などもかなりの頻度で歌われている。「天国への階段」はジミー・ペイジの超絶ギターソロで有名なのだが、パタヤのバンドもなかなか上手に演奏する。

パタヤではKISSやレッド・ツェッペリン、ディープ・パープルなどウルトラ級の懐メロが聞けてそれはそれで面白いのだが、若い観光客は知っているのかな?ベトナム戦争当時、パタヤが米軍の一大歓楽地になっていた名残りが強く残っているため、遥か昔、70年代、80年代ロックが定着しているのかもしれない。しかも、パタヤに長期滞在している欧米の男性は年金生活者が多く後期高齢者もたくさん住んでいる。こうした客層のニーズを意識している部分はあるだろう。

ただ、個人的にはせっかく南国のビーチリゾートに来ているのでユーミンや山下達郎、竹内まりあ、など日本のシティポップをゆっくり聴いてみたいものだ。たまに、生バンドが入っているビアバーに行くと、客の出身地を尋ねた後、その国のヒット曲を歌ってくれる場合がある。日本人客がいる場合は多くの確率で谷村新司の「昴ーすばるー」、韓国人客だとBTSの「ダイナマイト」やNewJeansの「DITTO」など。

欧米からの観光客も実はテイラー・スイフトやジャスティン・ビーバーの曲を聴きたいのかもしれない。機会があったらぜひヒアリングしてみたい。