カオサンには料理の専門店や屋台がたくさん並んでいる。ぶらぶら歩いていると、香辛料に甘味が混ざったような香りが漂う一角に出た。その香りは屋台のカレー料理が発信源だった。店の名前は「honestbee」。
初老のおばさんが元気いっぱいにカレーをかきまぜている。数種類あるカレーの大鍋をのぞくと、イエローカレーだけ極端に量が少なくなっていた。買い物客が次から次へとこのイエローカレーを買っていく。どうやらこの屋台の人気料理はこれに違いない。ひとつ注文してみた。
よく見ると、まず筍(たけのこ)だけをお玉ですくってからごはんの左半分のエリアに配置していることが分かる。ついで、鶏肉を右半分のエリアに配置した。うーん、絶妙である。日本でもよくタイカレーを食べるが、たいていは具材が混濁した状態でごはんにぶっかけている。でも、この屋台は筍は筍、鶏肉は鶏肉というように両者の味をそれぞれ味わうことができるよう盛り付けているのだ。筍の部分もカレーの水分は極力少なくしてタイ米がふやけないように工夫しているように見える。この技巧には目を見張った。
この屋台にはカレーのほかにもチキンから揚げなど豊富なメニューを提供。先代の遺影だろうか、意志の固そうなおじいさんの写真が丁重に飾られていた。
テイクアウトしてホテルの中庭で食べてみる。はやり、筍と鶏肉を別々に盛り付けていて、しかもごはんがふやけていない。カレーの水分は下にたまっていて、上部の筍や鶏肉と混ぜ合わせて食べられるようになっていた。これは旨い。タイの人々の知恵と工夫がこもった一品だった。