朝から暑い日は無性にカレーが食べたくなる。そんな時にいつも目指すのはブアカオ常設市場のカレー屋さん。タイ語の店名を英語読みにすると「Nana Dek Doi」。店主によると“チェンライからやってきたナナ”といったような意味。別の地元女性は「チェンマイだと思う。チェンマイもチェンライも一緒」との答えだった。チェンライということはタイ北部料理が自慢のお店ということのようだ。タイ政府観光庁のHPによると、タイ北部料理は他の郷土料理と比べて辛くなく、誰でも食べやすい料理。辛くないのは陸続きになっている隣国のミャンマー、ラオス、中国の食文化や山岳民族独自の食文化の影響を受けているからで他の地方と違って辛すぎず、酸っぱすぎず、濃すぎず、マイルドな味付けのものが多いのが特徴、という。
お店にはざっと7種類のメニューが並べられている(日によって増減する)。細かく観察すると種類によって具材が大きく異なる。豚肉、魚、鶏肉、牛肉から豆類、じゃがいも、なす、にんじんなどの野菜を濃い口から薄口のカレーで煮込んでいる。最初はあまり味の違いを意識しておらず、プラスチック容器に盛ったライスに2種類のカレーをぶっかけてもらっていた。お代は50バーツ(約200円)。それをワシワシと食べていたのだが、よくよく考えると実にもったいない食べ方だ。それぞれのカレーの味が混ざってしまうので違いが良く分からなくなる。
そこで、訪問2回目からはライスに1種類のカレーだけかけてもらうことにした。40バーツ(160円)。
これは豚肉とハーブのカレー。全体的にマイルドだが、スパイシーな味わいが後から追ってくる。提供しているメニューのすべてがタイ北部料理ではないのかもしれない。「タイ料理には大きくわけて、バンコクを中心としたタイ中部料理、プーケットなどのタイ南部料理、チェンマイなどのタイ北部料理、タイ東北部のイサーン料理と4つの郷土料理がある」(同HP)。パタヤの住民が好む味に合わせて各地方の料理をアレンジしている可能性もある。パタヤにはイサーンと呼ばれるタイ東北部出身の出稼ぎ女性も多い。文化は混淆していくものだ。人々が次から次へと越境していけば食べ物の味わいもまた混ざり合っていく。
上の写真を見ると、右側のカレーは赤っぽいが、右側のカレーはグリーンに近い。カレーの種類に合った具材を使っているようだ。コロナ前の常設市場にはなかったこのカレー店。けっこう多くの地元の人がテイクアウトで購入していた。その味はお墨付きのようだ。このお店のメニューと味わいの奥深さについてはこれからもレポートしていきたい。