パタヤには『THE PATTAYA NEWS』という地元メディアがある。その名の通りローカルメディアだが、もちろんネットを開けば世界中で見ることができる。外国人が世界中から集まるパタヤではさまざまな事件、事故、犯罪が起こる。時には観光客と地元の商店、人の間でトラブルも持ち上がる。
そんな中、心温まるニュースが報じられた。
『Pattaya Motorbike Taxi Rider Returns Lost Wallet with Almost 100,000 Baht to Foreign Tourist』(パタヤのバイクタクシーライダー、外国人観光客に約100,000万バーツの紛失財布を返却)
どういうことなのか?記事を読んでみる。
6月27日、バイク運転手のチャムナン・サワンサップさん(62)はセントラルロードのソイ・ブアカオ13の前にあるバイクタクシーの停留所で財布を拾った。同氏は、乗客を送り届けて戻った後、地面に財布が落ちているのを発見。 財布の中には外国人のさまざまな重要書類のほか、タイバーツ換算でほぼ100,000万ドル以上に相当する米ドルが入っていたという。所有者が現れた場合に備えて10分間待った後、チャムナンさんは財布をパタヤ警察署に届けた。チャムナンさんが届け出た後、外国人男性が署に現れ、財布を紛失したと主張。 この男性と財布の中に入っていた書類の身元と一致したため、警察は財布を男性に引き渡した。チャムナン氏は「このお金では裕福になれない。私は正直でありたい」と語ったという。
『THE PATTAYA NEWS』の実際の紙面
記事の写真を見ると、財布を落とした男性は欧米系のかなり年配の方。普段から落とし物をよくするタイプにも見える。運転手の善良な行動に読者からは「今日の社会でこんな正直な人は珍しい。称賛する」「タイには正直な人がたくさんいる。私はケータイを紛失したが、戻って来た」という反応のほか、「運転手にお礼を上げることを望む」「チップはないのか?」と、善良な運転手に対していくらかの支払いを求める声も上がっている。
さて、このモトサイ運転手。昼間は暇そうにしているが、実際はさまざまな仕事を兼ねているらしい。地元日本人によると、食堂のデリバリーや現地子弟を学校に送り迎え、バイク修理などをしている。その街のホテル、建物、食堂、地元有名人、警察の情報には驚くほど詳しい。何か困ったことがあれば、モトサイ運転手に聞けばだいたいのことは分かるそうだ。40バーツで行けるところを「100バーツ」と吹っ掛けてくる運転手もいるが、いざとなったら頼れる存在でもあるようだ。
タイは仏教国。この運転手が財布を警察に届けた行為は「タンブン」でもありそうだ。「タンブン」とは徳(ブン)を積むこと。徳を積めば輪廻転生で来世は極楽浄土に行けるという上座部仏教の教えだ。僧侶を招いて食事をふるまうことや、仏にお布施をする行為もタンブン。モトサイ運転手の善行は、実はタイらしい一面を見せたのだとも思う。